09耐震や14耐震とは?
エレベーターの耐震基準
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この記事を読んで分かること
- エレベーターの安全基準の変化
- 09耐震、14耐震とは何のことか
- 既存不適格とはどういった状態か
メンテナンス会社からのエレベーターリニューアルの提案で「09耐震」や「14耐震」という言葉を見かけたり、定期検査で「既存不適格」という言葉を見かけることがあると思います。
この記事では、「09耐震」「14耐震」や「既存不適格」とはどういうものか?また、エレベーターの耐震基準について解説していきます。
エレベーターの耐震基準
エレベーターの耐震基準は、過去の地震や災害、建築物の構造変化、機能維持、安全性という観点からその基準は都度見直しがされてきた経緯があります。
その際にエレベーターに長時間閉じ込められたり、扉に挟まれたり等という事案から今後はそのような事案をできる限り防止するために耐震基準が設けられました。
時代で変わる基準
近年だと2009年(09耐震)にはエレベーターへの安全対策の義務、2014年(14耐震)では釣合おもりの脱落防止などの耐震性強化にかかわる対策が基準として追加されました。
日本は地震(災害)の多い国として様々な状況に応じて建築基準法の法改正がされています。それと同時に耐震基準も一緒に見直しがされ基準の目的も時代とともに変化しています。
耐震基準の変遷
それではエレベーターの安全基準がどのように変化してきたか見てみましょう。設備上の用語なので難しい言葉が多いですが「こういった機能・装置が追加されたのか」と簡単にイメージを掴んでもらえればと思います。
耐震基準の変遷
●1981年(昭和56年)に宮城県沖地震を受けてエレベーターの機能維持、破損防止を目的として財団法人日本建築センターが「エレベーター耐震設計・施工指針」を公表しました。その年の下二桁から「81耐震」となり、その後も同様の名称が付けられています。
・かごや釣合おもりの脱レール防止対策の強化
・巻上機や制御盤の転倒防止対策の強化
・ロープ類引っ掛かり防止対策の強化
●1998年(平成10年)の阪神淡路大震災を受け、エレベーターの機能維持だけでなく、破損防止を目的として財団法人日本建築設備・昇降機センターが「昇降機耐震設計・施工指針」を公表しました。81耐震に加え下記の基準が追加になり「98耐震」としました。
・釣合おもりブロックの脱落防止対策の追加
・巻上機や制御盤の転落防止対策の強化
・ロープ類引っ掛かり防止対策の強化
・エスカレーターの耐震設計基準の判定
●2009年(平成21年)新潟県中越地震、千葉県北西部地震から建築基準法の改正により人命優先、安全走行が目的となりました。通称「09耐震」です。これは目的がエレベーターの機能維持(破損防止)から人命優先や安全走行に変わった象徴的な出来事になっています。この改正により下記の装置などが義務化されるようになります。
・戸開走行保護装置(UCMP)の義務化
・地震時管制運転装置の義務化
・予備電源装置(UPS)の義務化
・ガイドレール・レールブラケットの強化
・長尺物振れ止め対策強化
●2014年(平成26年)には東日本大震災の経験から人命優先、安全走行に加え、更なる耐震性強化を目的に制定されました。通称は「14耐震」です。東日本大震災の時にエレベーターの釣合おもりの脱落が多数あったことから地震への対応が追加された形になります。
・地震その他の震動によってエレベーターが脱落するおそれがない構造方法
・エレベーターの地震その他の震動に対する構造耐力上の安全性を確かめるための構造計算の基準
・地震その他の振動によって釣合おもりが脱落するおそれがない構造方法
※ 14耐震の工事は基本的にメーカー系のみ施工可能です
(詳細は工事の施工候補になっているメンテナンス会社に確認しましょう)
81耐震 | 98耐震 | 09耐震 | 14耐震 |
脱レール防止対策 | 脱レール防止対策 | 脱レール防止対策 | 脱レール防止対策 |
機械室機器の転倒、移動防止 | 機械室機器の転倒、移動防止 | 機械室機器の転倒、移動防止 | 機械室機器の転倒、移動防止 |
レール、レールブラケット補強 | レール、レールブラケット補強 | レール、レールブラケット補強 | レール、レールブラケット補強 |
昇降路内突起物保護 | 昇降路内突起物保護 | 昇降路内突起物保護 | 昇降路内突起物保護 |
主策の外れ止め | 主策の外れ止め | 主策の外れ止め | 主策の外れ止め |
おもりブロック脱落防止 | おもりブロック脱落防止 | おもりブロック脱落防止 | |
懸垂機器の転倒、移動防止 | 懸垂機器の転倒、移動防止 | 懸垂機器の転倒、移動防止 | |
長尺物振れ止め対策強化 | 長尺物振れ止め対策強化 | ||
ガイドレール、レールブラケット強化 | ガイドレール、レールブラケット強化 | ||
ガイドレール、釣合おもりの強度評価方法を規定 |
既存不適格とは
エレベーターを安全に使用するために管理者が守るべき基準があります。現在は基本的に新しく設置するエレベーターには、09耐震基準の対策が義務付けられています。
●戸開走行保護装置(UCMP)
●初期微動(P波)感知地震時管制運転装置
●停電時自動着床装置
●耐震構造強化
一方で、エレベーター設置当時は(法令)基準を満たしていたが、その後の法改正によって基準が変わり現在の基準を満たさなくなったエレベーターを「既存不適格」といいます。
これは定期検査時に指摘されることはありますが、現在の法令に合致をしていなくとも「違法」となることはありません。(定期検査時に「既存不適格」の指摘がされます)既存不適格であってもすぐに乗れなくなることはありませんが、現在の安全基準は満たしていない、という事を認識しておく必要があります。
この「既存不適格」のエレベーターの改修を行う際、改修内容によって最新の基準に合わせて工事を行う必要があります。
まとめ
今回は、耐震基準や既存不適格という言葉に注目してみました。日本は災害がいつ起こるか分からない国です。「既存不適格でも違法ではない」とはいっても当時の安全基準や安全技術と現在の基準や技術には大きさ差があります。
平時では安全でも対策が不十分なエレベーターでは災害発生時に非常に危険な状態になる可能性があります。被害を未然に防ぐためにも最新の基準で改修を行っていくことも検討してみてはいかがでしょうか。